TL;DR
2024 年 4 月に Cloud Solution Architect (CSA) として新卒入社した Microsoft を退職し、2026 年 9 月から Sakana AI に Software Engineer (SWE) として入社しました。
退職の理由を一言でいうと「技術に軸足を置くキャリアを選んだから」です。Microsoft に不満があったわけではなく、むしろ好きなところばかりでした。CSA という仕事を嫌いになったわけでもありません。むしろ大好きだからこそ、一度外で修行してくることにしました。それでも辞めることにした経緯と、Sakana AI を選んだ理由を書き残しておきます。
Microsoft での約 2 年半
CSA はポストセールスのエンジニアとして、顧客に対して有償で技術支援を行う仕事です。僕は AI / アプリ開発領域を担当する CSA でした。
新卒で CSA として働くことの功罪については、「Shun Ishii | 新卒アーキテクトの楽しさと苦悩」に書かれていることに全面同意するので、こちらをご参照いただいた上で続きを読んでいただけると幸いです。
Microsoft の好きだったところ
もう辞める身なので忖度無しに書きますが、好きなところしかありませんでした。なお、あくまで CSA としての観測範囲です。
人が良い
CSA の人たちが好きでした。
技術や PM などのスキルは前提として、「人としての良さ」が際立っていました。人としての良さとは、例えば「相手の立場に立って考えられる」「相手のことを思いやれる」「相手のことを尊重できる」といったことです。この当たり前が出来る人は意外と少ない中で、CSA にはこの当たり前が出来る人が多く、非常に居心地が良かったです。僕が 2022 年のインターンを経由して入社を決めた理由も、これでした。
技術好きな人が多い
やはり技術が好きな人が多いです。オフィスはフリーアドレスでしたが、CSA の人たちは大体近くの席に集まっているので、ふとしたときに井戸端会議が始まることも多く、案件の相談なども気軽にできる環境でした。技術好きな人が多いので、技術の話をしているだけで楽しかったです。特に Kazuki Ota さんはほぼ毎日オフィスに来ていて、技術の話をしてくれるので、非常に刺激になりました。
圧倒的ホワイト
圧倒的ホワイトでした(営業や他ロールは知らない)。
フレックスでコアタイムが無いため、日中にプライベートの用事を済ませることも可能ですし、気分によってはジムに行って気分転換する日もありました。もちろん案件が複数重なったときなどは忙しいです(し、シニアな CSA は僕より忙しそうでした)が、それらは技術的なタスクなので、エンジニアとしては楽しい忙しさでした。
振り返ってみると、一度も残業代をもらったことがありません(みなし残業がいくらかあるので、それを超えたことが無いという意味です)。
それくらいホワイトな環境で働かせてもらえたことは非常にありがたかったです。おかげで仕事のインパクトを考えながら、技術的なタスクに集中して取り組むことができました。
カスタマー サクセスという仕事
Microsoft そのものの話からは少し逸れますが、CSA の仕事はカスタマー サクセスの仕事です。顧客の課題を解決することが目的であり、そのための手段として技術的なタスクを行います。
僕はこのカスタマー サクセスの仕事が大好きでした。僕が学生時代から標榜しているモットー(Sakana AI の面接でも伝えました)は「人を助けるモノづくり」と「コミュニケーションを伴う課題解決」です。これは See-Through Captions の研究を通して見つけた、自分の LIKE です。困っている人のために技術を使いたい。「自分は何のためにエンジニアリングをしているのか」をいつでも思い出させてくれる、そんな尊い研究でした。
そんな自分にとって CSA はまさに天職でした。人や企業の悩み・課題を解決するために、自分の技術力を全力で発揮できる仕事でした。
今回の退職にあたっていくつかの顧客に退職の旨を伝えましたが、感謝や寂しさの気持ちを伝えてくれる方が多く、卒業式でも泣かないタイプの自分でも思わずうるっときてしまいました。顧客の方々にとっても僕の仕事が少しでも役に立っていたことを知れて、とても嬉しかったです。
それでも退職を決めた理由
ここまで書いた通り、Microsoft も CSA も大好きでした。それでも辞めることにしたのは、「次の 10 年をどこで積み上げるか」を考えたときに、技術に軸足を置く道を選んだからです。そして、その理由を固めていく過程でも、Microsoft の人たちの良さを痛感することになりました。
仕事が「回る」ようになってしまった
きっかけは、仕事が回るようになってしまったことでした。
デリバリーの効率を上げるために、リピータブルな技術資産を拵えて使い回すことが増えていきました。年次も経験も圧倒的にジュニアな自分が担当するのは、過去の案件で型が見えているテーマが中心だったので、こうした資産がよく効きます。それ自体は良いことですし、案件そのものはどれも面白かったのですが、結果として、資産を整えれば整えるほど、自分の手を動かす余地は減っていきました。
この流れは 2026 年の 4 月頃にピークを迎えます。3 月までは非常に忙しかった反動もあり、一気に仕事に身が入らなくなりました。そして同時に、そんな自分が許せなかった。快活に仕事ができない時期がしばらく続きました。
逃げではなく、まず中で相談した
ただ、この状態で外に目を向けるだけでは逃げだと思いました。そこでシニアな先輩たちやマネージャーに、たくさん相談しました。
そのおかげで、いくつかの大きなプロジェクトに巻き込んでもらったり、先輩たちの仕事の進め方をシャドーさせてもらったりしました。「仕事に身が入らない」と相談してきた後輩に、ここまで機会を用意してくれる人たちです。
そして、その機会の中で気づいたことがあります。自分には「お客様側の開発経験」が足りない、ということです。支援する側ではなく、支援される側としてプロダクトを作る経験です。
技術か、コミュニケーションか
並行して、5 月の GW には知り合いのつてで色々な人や会社に会いに行きました。Microsoft と同じような大手からスタートアップまで、外資を中心に幅広く見てまわりました。
この時点では、どのロールに転職するかは決めていませんでした。CSA は先述の通り、技術もコミュニケーションもどちらのスキルも求められ、養われる仕事です。だからこそ次の選択肢として、より技術に寄るのか、コミュニケーションに寄るのかを決断する必要がありました(後者はつまり Tech Sales や DevRel、GTM などビズサイドに行くということです)。
どちらの方向性も愛せてしまった自分は、他社リサーチの傍ら「どちらが長期的に得か、輝けるか、後悔がないか」を軸に自己分析を始めました。
技術を選び、一度外に出る
熟考の末、自分は技術を選びました。理由は 2 つあります。
1 つは長期的なキャリアです。将来的には CPO や CTO など、プロダクトや技術に何かしらの責任を持つロールにつきたいと考えています。そのために今は技術的な芯を太くしつつ、その上で大きなプロジェクトを遂行する経験を積みたい。
もう 1 つは、CSA としての最短経路です。先輩たちとの仕事で見えた「お客様側の開発経験」は、CSA を続けていても緩やかに身についていっただろうと思います。ただ、シニアな CSA をゴールに置いたとき、そこへの最短経路は CSA を続けることではなく、一度外で SWE をやってから CSA に戻ってくることだと思ったのです。
Sakana AI に入社する理由
同期の熱量
Microsoft の同期が数ヶ月前に Sakana AI に Applied Research Engineer というロールで転職していました。彼とはちょくちょく会う機会があったのですが、その度に「Sakana AI マジで楽しい!」「みんな優秀!博士か Kaggle Grandmaster ばっかり!」「最高な環境!」とパッションを持って教えてもらっていたので、流石に興味が湧きました。
5 月頃の採用説明会で彼以外の Sakana AI のエンジニアとも会話させてもらいましたが、彼が言っていることが嘘ではないことが無事わかりました笑
「誰に」「何を」作るのか
もう一つ、自分にとって大事な理由があります。
先に書いた通り、自分は See-Through Captions の経験に代表されるように、人助けをする開発が大好きです。技術そのものも好きですが、それ以上に、技術を使って誰かを助けているという実感が得られる瞬間に興奮を覚えます。承認欲求に近いドリブンかもしれません。それゆえに、「誰に」「何を」作るのかは、自分にとって重要な軸でした。
Sakana AI は日本発の AI スタートアップとして、日本の防衛や金融を支える最先端のプロダクトやサービスを開発しています。ここに参画できれば、「日本に資する」最高の開発体験ができると思いました。
選考プロセス
そして 1 ヶ月ほど経ってから SWE にアプライし、選考を突破して無事にオファーをいただきました。働きながらだったので時間こそありませんでしたが、選考プロセスはとても楽しく、毎回の面接から非常にリスペクトを感じました。
面接で気持ちは変わる
人生で初めての転職活動で感じたのは、面接を通じて「入社したい気持ち」が変化することが非常に多いということです。これは良い方向にも悪い方向にもありました。
Sakana AI はもちろん良い方向の実例ですが、正直逆もありました。最初は有名企業で期待とワクワクを持って臨んだのに、面接のたびに「あれ?少しコミュニケーションが合わないかも?」「仕事を楽しんでなさそう?お金のため?」と感じるインタビュアーに遭遇すると、オファーをもらっても行かないかもという思いが芽生え始めた経験がありました。
会社の看板よりも、面接で実際に会う人たちがどんな人か。入社の決め手としてはそちらのほうがずっと大きいというのが、今回の転職活動で得た学びです。
退職を伝えてから
Microsoft の人たちは、最後まで最高でした。
マネージャーに退職の意思を伝えたところ、すぐさま本部長や役員の方々が 1on1 や食事の機会を作ってくださいました。じっくり話を聞いてくださり、残る選択肢についても一緒に考えてくださいました。一人の新卒にそこまでしっかり向き合ってくれたという事実に、すごく感動しました。
その貴重な機会では、僕個人の話に加えて、「新卒をどう育てていくか」「若手にとってもっと魅力的な組織にするにはどうすればいいか」というテーマでもディスカッションさせてもらいました。一人の新卒の視点を真剣に聞いてくださる姿勢と、その視座の高さを改めて認識しましたし、いずれは自分も、彼ら彼女らのような人間力とレスポンシビリティを身につけたいと思いました。
そのマネージャーや役員の方々にも伝えたのは、「僕はきっと CSA に戻ってくるだろう」ということです。厳密には Microsoft の CSA ではないかもしれません。それでも僕はこの仕事が大好きで、だからこそ今の自分に足りないものを埋めて、もっと大きく活躍できるようになるために、修行の旅に出てきます。そう伝えました。
送別会でも「絶対に大物になれよ!」「また戻って来て!!!」「その決断を成功にしろ」と、身に余る言葉をたくさんいただきました。本当にみんな、最高に優しくて優秀な存在でした。
入社して 2 週間
まだ 2 週間ですが、本当に刺激的な日々を過ごしています。定型文じゃなくてマジで刺激的です。
初日は流石に PC セットアップでしたが、翌日からプロジェクトとして仕事を始めさせてもらい、素晴らしいスピード感を享受しています。SWE としてはまだまだ経験が浅く、「もっとコントリビューションしたいのに!」という気持ちの日々ですが、徐々に自分の持てる力を出して成長し、会社に、ひいては日本に貢献したいという気持ちが強いです。
おわりに
Microsoft での約 2 年半は、社会人としての土台をつくってくれた時間でした。お世話になった CSA の皆さん、マネージャーや役員の皆さん、顧客の皆さん、本当にありがとうございました。
そして Sakana AI では、ここからが本番です。「人を助けるモノづくり」というモットーは変わらないまま、フィールドを変えて技術を磨いていきます。引き続きよろしくお願いします。